大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)82号 判決 1966年7月29日
控訴人 早瀬政春 外一名
被控訴人 本場商事株式会社
主文
本件控訴を却下する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
理由
控訴人らは、大阪地方裁判所が同庁昭和四〇年(手ワ)第一九〇九号約束手形金請求事件についてした、被控訴人の請求を認容する手形判決に対し、控訴を申立てたものであるが、右のような手形訴訟の終局判決に対する不服申立としては、異議の方法だけが認められており、控訴の方法によることは許されないのであるから(民訴法四五〇条、四五一条)、本件控訴は不適法なものとして却下を免れない。
なお附言するに、本件申立は、これを手形判決に対する異議とみる余地がないではないが、異議はその判決をした裁判所に申立てることを要するのであるから、大阪地方裁判所に対してしなければならないものであり、当裁判所に対してした本件申立は到底適法な異議申立ということはできない。
もつともこの点について、民訴法三〇条の規定により本件申立を大阪地方裁判所に移送すべきものとする考え方もあり得るところであるが、本来移送の規定は、訴について定められたものであり、これを訴以外の申立、例えば競売申立、執行方法の異議申立、上訴申立等に類推することができるとしても、その範囲はいずれも裁判所に対し一定の申立事件を係属させ、それに対する応答を求めるものに限られるものであつて、手形判決に対する異議申立はこれに含まれないものと解するのが相当である。けだし手形判決に対する異議は、手形判決をした裁判所に対し、訴訟を口頭弁論終結前の程度に復し、通常の手続によつて審理裁判するよう求めるものであつて、新たに一定の事件を係属させるものということはできないからである。そうすると本件申立は結局適法な異議申立とみることもできない。
よつて民訴法三八三条、九五条、九三条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 金田宇佐夫 中島一郎 阪井いく朗)